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DNA


私の娘は、産まれた時、私に全く似ていなかった。

何時間も腹を痛めて絶叫しながらようやく産んだ我が子は、
あろうことか主人に瓜二つであったのだ。
思わず「・・・本当にオレの子か?」と例の禁句を口にしそうになったほどである。

生まれたての赤子にあるまじき凛々しい眉毛、くっきりとした二重、
ほんの少しつり上がった目尻、小さくM字に結ばれた口元。
どこをどう見ても、私に似ている部分などひとつも見つからなかった。

そして、彼女は異様に可愛かった。
彼女を一目見た者はみな、口を揃えて「なんてかわいい赤ちゃん!」と叫んだものだ。
目がパッチリしていて、顔立ちがはっきりしていて、まるでハーフの子みたい、と。

そのような台詞を年配の方々に言われても、あぁどうもと思う程度だが、
道行くティーンな女子学生たちが振り返って
「見てあの子、超かわいくない?!」と言うのを聞いた時、
私は、嗚呼これは親の欲目ではない、この子は本気で可愛いのだ、と確信を持った次第である。

そして、「かわいいですね~!お父さん似ですか?」と無邪気な顔で尋ねられるたびに、
その言葉の残酷さをお前はわかっているのか、と内心で返しながら、
「そうなんですよ~」と穏やかに応じていた。
若干の切なさは残るが、その言葉は確かに事実であったので、
どこにも反論の余地はないのである。

そんな娘であるが、先日、衝撃的な事件があった。

1歳8ヵ月を迎えた娘と、自宅近くを散歩していた時のこと。
なぜかその日は妙にハイテンションではしゃぎまわっていた彼女であったのだが、
ある瞬間に私を見上げて、にぃっと笑ったのである。

あ・・・私だ。

その瞬間の娘の笑顔は、あろうことか私にそっくりであったのだ。
私は目を疑った。
幻覚を見ているかのような気分であった。
目の前に、自分の顔がある。
しかもなんだか、すごく幼い自分が。

驚きの後に、深い安堵と愛情の波がごちゃ混ぜになって押し寄せてきた。

そうか、やっぱり私の子なのか。
・・・そりゃあそうだわ。

そして自分に似ていると感じてもなお、私はこの子を可愛いと思っている。

娘を可愛いと思えることで、自分のこともより一層好きになれそうな、
そんな気がした、メルヘンな春の夕暮れ。



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